思索・アフォリズム・詩

流される

この酷く落ち込む憂鬱といふ名の大河に吾は 唯、流されるに任せるのか。 とはいへ、この川幅を泳いで渡る気力もなく、 また、幸ひにもこの大河は静かに流れ、 吾はそれに浮かんでたゆたふのが悦楽なのだ。 憂鬱に身を...
ヰリアム・ブレイク作品

The Marriage of Heaven and Hell

The Marriage of Heaven and Hell  『天国と地獄の婚姻』 by William Blake             翻訳 積 緋露雪   要旨。 リントラが重重しき空気の中...
小説

夢幻空花(むげんくうげ)

夢幻空花(むげんくうげ)   序   なんだかんだであれやこれやと思ひ悩みながらの十年以上の思索の結果、埴谷雄高の虚体では存在の尻尾すら捕まへられぬといふ結論に思ひ至った闇尾(やみを)超(まさる)は、それではオイ...
小説

審問官 第二章「杳体」

審問官 第二章「杳体」                積 緋露雪 出会ひ 私が勢いよくさっとその喫茶店の手動式のドアを開けると、 ――カランコロン と呼び鈴が鳴ったのであった。 私はL...
小説

審問官――第一章 喫茶店迄

審問官――第一章 喫茶店迄              積 緋露雪 著   序 彼が絶えず「断罪せよ!」といふ内部から沸き上がつて仕方がない自己告発の声に悩まされ続けてゐたのは間違ひない。彼が何か行動...
小説

嗤(わら)ふ吾

嗤(わら)ふ吾 何がそんなに可笑しかったのかてんで合点のいかぬ事であったが、私は眠りながら《吾》を嗤ってゐた自身の覚醒する意識と共に確信した刹那、ぎょっとしたのであった。 ――嗤ってゐる! その時私は夢を見てを...
思索・アフォリズム・詩

世界を握り潰す

宇宙開闢以前の《世界》は《存在》する   ――例へば此の世に幽霊が存在し得るのであれば、其処は「現存在」の背である筈だ! ――それは何故かね? ――何故って、それは、唯一、此の世で「現存在」が裸眼で直接見られぬ処...
小説

水際(みぎは)

水際(みぎは)                     積 緋露雪           ……己の7割弱が《水》である以上、己を敢へて言へば不純物の混じった《水》に過ぎず、ならば己と言ふ《...
小説

審問官第三章 「轆轤首」

審問官第三章 「轆轤首」   と、ここで、「彼」のノートは破られていた。これは彼がわざとさうしたとしか思えぬのであったが、と言ふのも、彼はこの手記で物語を語る気はさらさらなく、思考がしょっちゅう脱線するやうに...
小説

夢魔

「夢魔」 積 緋露雪 ――この野郎! と、さう頭蓋内といふ闇の脳と言ふ構造をした《五蘊場》――私は脳絶対主義が嫌ひで脳と呼べばそれまでなのだが、どうしてもさう呼ぶには忍びないある羞じらひがあった...